恋なんて、しないはずだった
「碧ちゃんは?」

「あたしは、K市」

「え、隣町なんじゃん!実家近いから長期休みとかも遊べちゃうね!」


K市とA町は隣町で、普段から行き来する人は多い。
ただ、行き来するといってもK市であたしが住んでいたところは目立つところではなかったのでそのを選んだに近い。


「そ、そうだねー」


本当はあの町の誰とも仲良くするつもりなんてなかった。
たとえ同じ学校じゃかったとしても、少しでも接点があるだけで不安になってしまう。
被害妄想が激しいと言われても仕方ないけど、あたしは気づかれたくなんてないから。


「ちょっと、トイレ行ってくるね」


このままここにいると、どうにかなってしまいそうだからあたしはみんなに断りを入れて、席を立つ。

変に思われたかもしれない。
それでもあそこにい続けるよりはずっといい。
きっといつまでもこの苦しみからは離れることなんてできない。


「北海道を出てきても変わらないのか.......」


大我と一緒にいるうちに、明るい未来を描くようになった。
あたしも幸せになっていいんだと思えるようになった。
でも、たったこれだけのことであたしの自信は薄れてしまう。
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