恋なんて、しないはずだった
「.......大我」

『碧?どうしたー?』


──ねぇ、大我くーん!話そうよー

堪らなくなって大我に電話をかけてしまった。
教室にいることは分かってるけど、ガヤガヤと騒がしいバックにたくさんの大我を呼ぶ声。
やっぱり、大我とあたしとじゃあ世界が違うって思ってしまう。


「ちょっと電話かけてみただけ!ごめんね」


大我の返事を聞くことも無く、電話を切った。
最近ではこうして自己嫌悪に陥ることもなくやってきたのに、大我が傍にいないと全然自分を保てない。
やっぱり、東京に出てくるなんて間違いだったのではないだろうか。
こうして大我との違いを感じてしまうなら、遠距離でもしていた方がよかったのかもしれない。
いや、付き合わない方がよかったのかもしれないな。


「どうして、あたしってこうなんだろう.......」

すぐに暗い方向に考えを持ってってしまう自分が嫌で仕方ない。
すぐに地元での噂話が頭によぎってしまって、どうしても後ろを向いてしまう。
いい加減、前を向きたいのに。


「戻らなきゃ.......」


あんまり長いとみんなに変に思われてしまう。
重い腰をあげて、あたしはトイレをあとにした。

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