恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
高校に入って、同じクラスの名簿に凌の名前を見つけた時は目を疑った。
同じ学年に知り合いなんていないと思っていたのに。
信じられなくて、同姓同名の人なんだって自分に言い聞かせながら、でもドキドキしながら教室に入ったのを覚えてる。
真ん中の席でたくさんの人に囲まれて笑っているその人。
背が伸びて、髪を染めて、ずいぶんと雰囲気の変わってしまった彼だけど、どこか面影のある笑顔。
その人は間違いなく凌だった。
『……ひ、久しぶり、だね』
一人でいるところを見計らって、思い切って声をかけてみた。
けれど、凌はじーっと私の顔を見つめると眉間に皺を寄せて、
『……俺ら、どっかで会ったことあったっけ?』
なんて冷たく言われて。
頭を鈍器で強く叩かれたような衝撃を受けた。
それくらい、凌の記憶の中に私が残っていなかったのだ。
あの時の告白も、ありがとうの言葉も、照れたように笑った顔も……。
全部、ぜんぶ、意味なんてなかった。
そう言われたみたいに感じた。
もう好きだなんて伝えるつもりはなかった。
忘れられなかったのは本当だけど、私はもう新しい恋をして前に進み始めていたから、凌のことが好きだという感情はなかった。
声をかけたのは、せっかく高校で再会できたのだから、これから仲良くできれば良いなと思ったから。
凌が変わってしまったことに気が付いたのは、それから数日経った頃だった。