恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
周りには私たち以外に誰もいない屋上。
普段は鍵が掛かっているらしい。
じゃあどうして凌はここにいるのか。
『俺にかかれば教師一人落とすのも簡単だし』
『あー、はいはい。そうですか』
ドヤ顔で屋上の鍵をチラつかせる凌に少しイライラして、適当な相槌を打ちながら、私も近くに腰を下ろした。
その時、午後の授業を知らせるチャイムの音が聞こえてきたけれど、教室に戻る気になんかなれなかった。
『なに、お前もサボんの?』
『あんたには関係ないでしょ』
入学して早々サボることになるなんて、どうせなら保健室にでも駆け込めば良かっただろうか。
まあ、いくら後悔したってもう遅いんだけど。
そう、後悔したって、悲しんだって、時間は元には戻らない。
『……別に、好きでサボりに来たわけじゃないし』
そう呟いてみても、返事はなかった。
期待してたわけじゃないけどさ、何か言ってくれたっていいのに。
もっと会話を広げたりとか、そういう気はないんだろうか。
『…………』
凌はなにをするわけでもなく、時々スマホをいじったり、横になって昼寝をしたり。
そんなサボり慣れをしている凌の隣で、私はどうすればいいのかわからなくて、ただじっと体育座りをして目の前を見つめ続けた。