恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
なにもせずにただじっとしていたら、思い出してしまうのはさっきの光景で。
なんで?とか、いつから?とか、そんなことばかりが頭に浮かんでくる。
もっと思い切り泣けたらすっきりするのだろうか。
そんなこと思っても、不思議と涙が出てこないから、どうやってこのモヤモヤを解消すればいいのかが分からない。
『……なに?』
『え?』
そうやって塞ぎこんでいたら、急に凌が身体を起こして眉を寄せながら声をかけてきた。
『先輩とか浮気とか好きだったのにとか、さっきからブツブツ独り言言ってんの丸聞こえなんだけど』
『うそ……』
心の中で呟いていたつもりが、声に出てたなんて……。
しかも声に出してるワードが厳選されすぎてて言い訳出来ないレベル。
さっきまで私に1ミリも興味を示さなかった凌が、今ではあぐらを掻いてこちらを凝視しているし。
言え、聞かせろ、と言われているような気がして、私はぽつりぽつりとさっきのことを凌に話し始めた。
先輩を追いかけてこの高校にきたこと、でも先輩には他に付き合っている人がいたこと、2人きりでいるところを見て逃げてきたこと。
もっとバカにされるだろうと思っていたのに、凌は意外にも静かに私の話を聞いてくれた。