恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
貴重な昼休みは、あっという間にタイムリミットを迎えて、私は現実に引き戻される。
「なーに?今の小テスト、そんなに出来なかったの?」
「……違う。いや、違わないけど」
「どっちよ」
ってゆーか、化学の小テストやるなんて聞いてない。
知ってたら、凌とのん気に漫画なんて読まずにテスト勉強してたのに。
机に顔を埋めていると、里奈の小さな笑い声が聞こえた。
耳を澄ますと聞こえてくるのは教室の喧騒、隣の席の凌は授業が終わるなり姿が見えなくなった。
これが私の現実。
彼女がたくさんいる凌にとって所詮、私は大勢の中の一人。
その日のその時間を誰と一緒に過ごすかなんて、全部、彼の気まぐれで決まる。
だから、私から会いたいと連絡することはない。
他の人はどうしているのかなんて知らないけど。
一緒にいる時に凌のスマホが鳴ることはしょっちゅうだから、きっと色々な人から会いたいと連絡が来ているのだろう。
当然、それに応えるか応えないかも、彼の気まぐれだ。
今日はどれくらい一緒にいられるのかな。
一分一秒でもいいから長く一緒にいたいだなんて、そんなことを思っているのもきっと私だけ。