恋愛暴君のきみは、ときどき甘い


貴重な昼休みは、あっという間にタイムリミットを迎えて、私は現実に引き戻される。


「なーに?今の小テスト、そんなに出来なかったの?」

「……違う。いや、違わないけど」

「どっちよ」


ってゆーか、化学の小テストやるなんて聞いてない。

知ってたら、凌とのん気に漫画なんて読まずにテスト勉強してたのに。



机に顔を埋めていると、里奈の小さな笑い声が聞こえた。


耳を澄ますと聞こえてくるのは教室の喧騒、隣の席の凌は授業が終わるなり姿が見えなくなった。

これが私の現実。


彼女がたくさんいる凌にとって所詮、私は大勢の中の一人。

その日のその時間を誰と一緒に過ごすかなんて、全部、彼の気まぐれで決まる。


だから、私から会いたいと連絡することはない。


他の人はどうしているのかなんて知らないけど。

一緒にいる時に凌のスマホが鳴ることはしょっちゅうだから、きっと色々な人から会いたいと連絡が来ているのだろう。


当然、それに応えるか応えないかも、彼の気まぐれだ。


今日はどれくらい一緒にいられるのかな。

一分一秒でもいいから長く一緒にいたいだなんて、そんなことを思っているのもきっと私だけ。



< 22 / 25 >

この作品をシェア

pagetop