恋愛暴君のきみは、ときどき甘い

「あ、棗ちゃん!今ちょっといい?」


横から肩を叩かれてのっそりと顔をあげると、そこにいたのは同じクラスの百瀬可奈(ももせかな)で、妙なハイテンションっぷりを見せる彼女に嫌な予感が否めない。


「……嫌だ。行かない」

「ちょっと、まだ何にも言ってないんだけど!」


顔を見るなり拒否の言葉を告げる私に、里奈は他人事のように大爆笑している。


「だって、合コンの誘いでしょ?」

「う……、まあそうなんだけど」


明るい性格の可奈は誰とでも気さくに話し、友達が多い。

他愛のない世間話でよく盛り上がったりもするのだけど、つい2週間程前にもこんな感じのテンションで合コンに誘われたのは、まだ記憶に新しい。


その時も丁重にお断りしたはずなんだけど、こうして懲りずにまた誘いにくる辺り相当強いメンタルの持ち主なのだろう。


「可奈やん、それ高校入って何回目?」


面白そうに前のめりになって里奈が訊くのに、可奈が指を折って数え始めた。


「うーん、今回のを入れると6回目くらいかな?」

「やははは!それ週1ペースじゃん」

「笑い事じゃないし。こっちは毎回人数集めるのに必死なんだから」


というか、よくそんな頻繁に合コンなんてやれるな。

可奈みたいに明るくて顔面偏差値の高い女子なら、合コンじゃなくてもいくらでも彼氏を作るチャンスが転がっていそうだけど。

< 23 / 25 >

この作品をシェア

pagetop