恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
「なに見てんの?」
後ろからの声に、びくりと肩が跳ね上がる。
と同時に、目の前にあった雑誌が声の主によって攫われていった。
顔のすぐ傍を通過していく筋張った手に視線が奪われそうになるのを堪えて、キッと目元に力を込める。
「……ちょっと、返してよ」
「……女ってほんとこういうの好きだよな」
どうせ興味の欠片もないくせに。
大してじっくり見ることもなくパラパラと雑多にページを捲っていくと、目の前の男子は口の端を上げて意地悪そうに笑った。
「お前にはこれとか似合うんじゃねえの?」
「え、どれどれ?」
里奈が面白そうに雑誌を覗き込むのに、嫌な予感がしたけれどとりあえず自分も続いてみる。
再び机の上に戻された雑誌に写る服は、生地が薄くてスケスケのあられもない格好の……。
「ふ、ふざけんなっ!」
「顔真っ赤にして、かわいー」
どうせこんなことだろうと思ってはいたけれど、ちょっとでも期待してしまった自分が情けない。
里奈は「やははは!」と大口を開けて暢気に笑っている。
他人事だと思って、ほんとに……。
「凌、ちょっとー」
恥ずかしい思いをさせられたお返しに、この男の脇腹に一発パンチでも食らわせてやろうかと思っていた矢先。
廊下から女の子の声がして、ふとそっちに意識を持っていかれた。
3人そろって廊下の方に顔を向ける。
ドアに抱きつくようにして立ちながら、可愛らしく上目遣いでこちらを見ているのは、たしか私たちより学年が一つ上の人。