恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
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私の知っている限り、高校に入ってからの凌には彼女が途切れたことがない。
来る者拒まずの凌に告白すれば、誰だって彼女になれるのだ。
だから、凌の彼女だと名乗る人はたくさんいる。
みんな、そのことを了承して付き合っている。
そこにきっと愛はない。
だけど凌に新しい彼女が出来るたびに思うんだ。
今度こそ、凌が本気で好きになってしまったらどうしようって……。
かくいう私も、その一人。
かれこれもうずっと、凌に恋をしている。
「お前、動揺しすぎ」
「そ、そんなことないもん。というか、そもそも付き合ってないし」
放課後、屋上には私と凌の2人きり。
周りに関係がバレれると困るから、学校で2人きりで会うときは必ずここだ。
「つーか、良かったのかよ。浜辺と遊びに行くんじゃねえの?」
「……里奈は先生に呼び出しされてるから、終わったら連絡がくることになってるの」
「あっそ。ほったらかすんだ、俺のこと」
「…………ズルイ、その言い方」
視線だけを上げて見つめれば、また口の端を上げて意地悪な顔をして笑っている凌。
大きな手の平が後頭部に回る。
こうして優しく髪を撫でられるだけで甘い眩暈にクラクラさせられてしまう。
…………好き。
思わずそう呟いてしまいそうになるのを飲み込んで、凌の胸に顔を埋めた。