恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
私と凌がこんな関係になってから、1ヶ月弱。
とはいっても、凌の方から連絡をしてこない限りは、こんな風に2人で会うことなんかない。
他にも相手がたくさんいる凌だから、自分から連絡をすることは滅多にしない。
返事がなかったり、断られるということはつまり……そういうこと。
違う女の子と一緒にいる姿を想像したくはないから、私から「会いたい」と言うことは出来ない。
そう、凌のことが好きなのはいつだって私だけ。
そして、私が彼に「好き」だと伝えてしまえば、この関係は簡単に終わってしまう。
脆くて、曖昧で、悲しい関係。
それでも良いから、傍にいられるならと、自分で選んだ。
行き着く先に、幸せな未来なんて見えないのに。
凌の胸に埋まりながら、ぼんやりと空を眺めて溜め息を落とす。
すると凌の手が腰に巻きついて、ぐいと引き寄せられた。
ただでさえ近すぎる距離なのに、もっとこっちに来いと言われているようで。
ほんの隙間が出来ることも許されないくらい身体が密着して、勘違いしてしまいそうになる。
ゆっくりと凌の唇が耳元に近付いて、そっと囁いた。
「まだ忘れられないの?」