同期は蓋を開けたら溺愛でした
出社するとオフィスではアンドの話題で持ちきりだった。
急成長を遂げる若いライバル会社なだけあって、みんな注目していたようだ。
盛り上がる声が、嫌でも漏れ聞こえて複雑な気持ちになる。
きっと自分が当事者じゃなければ同じように思っていただろう声。
「せっかくいい文房具を発表していたのにね」
「本当に盗作したのかな」
「若い会社だから周りのやっかみもあるんじゃない?」
聞いていたくない内容も含まれている声に顔を俯かせる。
その頭に手を置かれ、ハッとして顔を上げた。
「おはよ。お前、勝手に帰るなよ」
不満を口にする大友は声色に反して、優しく頭を数回撫でてから、オフィスでは似つかわしくない会話を続ける。
「サンドイッチのお礼、期待してたのにな」
指先で自分の頬をトントンと指した大友が何を言いたいのか分かってしまって、顔が熱くなる。
「ここ、会社!」
反論したくても、声を落として訴えるのがやっと。
平然としている大友が恨めしい。
「誰も聞いちゃいないさ。ま、俺は聞かれたって構わないけど」
サラッととんでもない台詞をこぼして、大友は先を歩いていく。
常に戯れ合っている同期の大友と青木というレッテル。
誰も私たちの変化に気づく人はいない。