同期は蓋を開けたら溺愛でした

「すみません。カッターの打ち合わせを始める前に謝らなければなりません」

 物々しい雰囲気に『やはりカッターを商品化するのは無理です』と言われるのかと、増永さんの続きの言葉を重い気持ちで待つ。

「アンドステーショナリーの疑惑について、皆さんもご存じかと思います」

 私は緊張から無い唾を飲み込む。

 一息ついた増永さんは話を続けた。

「アンドは6月10日に我が社に来訪しています」

「え……。なんのために……」

 想像し得なかった話の流れに呆気にとられる。

「共同開発を持ちかけられ、営業部の者が対応しました」

「では、業務提携するんですか?」

 大友が低い声で質問を向けた。
 その声はどこか怒っているようにも聞こえ、納得していない様子が伝わってくる。

 私だって、今の段階で業務提携なんて考えられない。
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