同期は蓋を開けたら溺愛でした
増永さんは頭を左右に振り、そうではないと示す。
「上の者と相談しますと打ち合わせは終わりましたが、事実上、交渉決裂。その後、具体的には何も進んでいません」
ここまで増永さんが話すと原田課長が口を挟んだ。
「青木、今回のカッターを立案したのはいつだ」
「いつって……。前の打ち合わせ……」
「そうじゃない。青木が煮詰まって、大友と1階のカフェに行った正確な日付けが分かるか」
正確な、日付け……。
記憶を辿っていると増永さんは話を進めていく。
「日付けは確認してもらうとして。他の盗作が疑われる会社でも同じ現象が起こっているようなんです」
増永さんの言葉を受け取って営業課長が重々しく口を開く。
「アンドは打ち合わせと称してライバル会社に潜入している。そして打ち合わせが終わった後もロビーや休憩室で何気ない顔で過ごし、情報を集めた結果が盗作疑惑につながるようだ。今回の騒動は営業部の不手際にある」
営業部の3人は姿勢を正し、頭を下げた。
誠に申し訳ない、とまで口にする営業課長に戸惑う。
「不手際……ですか」