同期は蓋を開けたら溺愛でした
打ち合わせは時間が押して、カッターについては次回改めてと流れてしまった。
終わり際に営業課長が意欲的に告げる。
「青木さんのカッターについては木森文房具の威信にかけて、盗作したと言わせない、いい商品を出しましょう」
前向きな考えを聞いて胸をなでおろす思いがした。
解散になった会議室で、私はオフィスに戻ろうとする原田課長に声をかけた。
「原田課長。この度はご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
深く頭を下げると原田課長から温かい声をかけられる。
「こちらこそすまなかった。必ずいい商品にしよう」
「はい…」
力強い励ましに胸が熱くなり、声が震える。
顔を上げたいのに、上げられずにいると隣から呆れた声。
「おい、ここで泣くと原田課長が困るだろ」
私の頭を乱暴にかき回しながら顔を上げさせる大友に原田課長は苦笑する。
「本当に。どうしていいか困るから」
困ったように頬をかく原田課長を見て、鼻をすすりながら笑う。
「だからって俺に押し付けないでくださいよ」
迷惑そうに憎まれ口をたたく大友も笑っている。
良かった。本当に良かった。
心からそう思えて、やっと肩の力が抜けた気がした。