同期は蓋を開けたら溺愛でした

 実際、周りには恋人か夫婦、女性同士のお客ばかり。
 私たちでは場違いな場所、のはず。

「たまにはいいだろ?」

 そう言って、向かい合う私に手を伸ばし、頬へ流れる髪を耳にかける。

 慈しむような視線に困って、顔は俯いていく。

「あー。でも隣に座りたいな。お前の隣、居心地がいい」

 いつも右隣。
 私も正面に座るのは慣れない。

 同じ思いなのに、何故だか大友の言葉に胸がキュンとする。

 相手は、大友なのに。
 どうかしてるよ。

 自分の本当の気持ちを見ないようにして心の中で悪態をつく。

 促されるままパスタを頼み、会話もそこそこに食事をする。
 何を話していいのか心が浮ついて、せっかくのパスタの味も分からない。

 ただ大友が想像よりもずっと上品に食べていて、私が知らない大友の姿に余計に落ち着かない気持ちになった。

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