同期は蓋を開けたら溺愛でした

 店を出ようとドアを開けると外はまだ雨。
 傘を手にした大友は私の肩を引き寄せ、同じ傘に私を入れた。

「え、ちょっ……」

 傘を持っていなかった時にも入れられた大友の傘。
 その時よりもずっと近い距離に嫌でも心臓は騒ぎ出す。

 大友は私の傘を閉じた状態で腕にかけ、その傘は傘の役割を果たしていない。

 器用に私の傘をかけている腕で、自分の傘を持ち、もう片方の手は私の手を握る。

 振り解いて「何よ、恋人じゃあるまいし」そう言って戯けてしまいたいのに、もう逃げられない。

 大友は行き先が決まっているのか、真っ直ぐに何かへ向かって歩いていく。
 さきほどから歩いている場所は、最近リニューアルしたデートスポット。

 場所が場所だけに落ち着かない気持ちにもなるが、あいにくの雨模様のため夜景が見えるわけでもないし、ベンチに腰掛けるのさえも無謀だ。

 どこへ行くのだろう。

 その答えは思ったより早くもらえた。
 程なくして立ち止まったのは観覧車の前。

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