同期は蓋を開けたら溺愛でした
2.外堀から埋められる
打ち合わせを終えると時間は昼ちょっと前。
オフィスに戻るエレベーター内で早くもネクタイを緩めている大友に誘われる。
「このあと、飯行くだろ。社食? 外?」
「今日は里美と外で食べる約束してるから」
「そ、里美と約束してんなら、いいわ」
里美も同期。
総務課に属している西島里美(にしじまさとみ)とは教育中に仲良くなって、配属先が離れた今もこうしてランチを一緒に食べる約束をする。
放っておくといつも大友と行動を共にしていて、それはそれで楽なんだけど今日はそういうわけにはいかない。
財布だけ取りに戻り、1階ロビーで里美を見つけた途端、眉を八の字にして駆け寄る。
「里美〜」
甘えた声を出す私に里美は笑う。
「はいはい。いくらでも聞いたげるから」
人に甘えるのが苦手な私も唯一、里美には甘えられる。
「本当、ふとした時に脳内大パニックだよ」
「ま、私からしたら、やっと? って感じだけど」
「何がやっとよー」
「はいはい。詳しくはランチしながらね」
苦笑する里美とともにビルの外へ出る。
自社ビルは新しく、同ビル内にも食堂はある。
食堂と言っても社外のレストランやファーストフードなどが参入して、ちょっとお洒落なフードコートのような感じ。
ただ、いくらお洒落で社割が効いて安いからって、今日の話は社内ではしたくない。
誰か知り合いに聞かれでもしたら、たまらない。