同期は蓋を開けたら溺愛でした

「で、明日は何、食いたい?」

「朝はパンケーキ」

「朝から洒落てるな」

 そう言いつつもリクエストに応えてホットケーキミックスを入れた、その袋を棚に返す。

「なに」

「大友特製がいい」

「おい」

 大泣きした日に作ってくれた、小麦粉しかなかったのに試行錯誤して焼いたパンケーキ。

 どうやら泣かれて、かなり困ったみたいで、どうにか機嫌を取りたかったらしい。

 そうやって困らせて甘やかされ、いつの間にか大友がいないと生きていけない人間が出来上がってしまった気がする。

「あれ、黒歴史だろ」

 嫌そうな顔をして、それでもホットケーキミックスをかごには入れない。

「どうして黒歴史? 私はすごく嬉しかったよ」

「……あっそ」

 かごにはフルーツも追加され、豪華なパンケーキが頭の中に想像できて心の中でスキップする。

「私も手伝うね」

「当たり前だ」

「そ……」

 それこそ新婚さん。

 並んで仲良く朝食を作る場面が目に浮かんで、口先まで出かかった言葉を慌ててひっこめた。

 浮かれ過ぎだよ。

 反省していると「なに?」と怪訝そうな顔をされ「なんでもない」と誤魔化した。

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