同期は蓋を開けたら溺愛でした

 アパートに着くと不満げな声を出す大友が、靴を脱ぎながらぼやく。

「パンケーキ、今度は幸せそうな雰囲気で食べろよ。俺、あの後、パンケーキを見るのも嫌になった時期があったんだからな」

 そんなに大惨事だったのか当の本人は覚えていない。

 レジ袋から食材を出し、冷蔵庫にしまうのを手伝いながら、当時を思い出す。

 記憶では、大友はデザートまで作れるんだという驚きの方が優っている。

「居酒屋でなりふり構わず言ったのは、そのせいもある」

 急に話が飛躍して、私はレジ袋から野菜を取り出す手を止める。

 今、それは関係ないよね?

 そう思うのに、大友が『戯れ合う同期の距離』を崩してきた理由を知りたくもある。

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