同期は蓋を開けたら溺愛でした

「気持ちに気付いたのは大泣きされた日」

 大友は何かを諦めたように静かに話し出した。

 大泣きしたのは、社会人になって初めて付き合った人に振られた時。
 冬の初めに付き合って冬が終わる前に振られてしまった。

「パンケーキを作ってくれた、あの日?」

 それは昨日言っていた『黒歴史』というやつだ。
 私への気持ちを自覚した日が黒歴史って、あんまりだ。

 私は当然の疑問を向けた。

「どうしてそれが黒歴史?」

「気付かなければ、こんな思いしなくて良かっただろ。ただの戯れ合う同期でいられたのになって」

 拳を握りしめる大友は悔しそうに吐露した。

 大友の台詞も態度もショックだった。

 同期の関係を大友も崩したくなかったのだ。
 自分だって今でもその思いがあるのに、大友がそう思っていると嫌だなんて、とんだわがままだ。

 分かってる。分かっているのに、上手く処理できない。

 大友はなおも続けた。

「パンケーキを見る度に泣いてるお前が頭に浮かんで切なくなった。どうにかしたやりたいのに、同期の俺じゃどうにもできない」

 そんな風に考えていたなんて……。

 胸が痛くなって、服の裾をギュッと握りしめる。

< 163 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop