同期は蓋を開けたら溺愛でした
服のシワは精一杯伸ばし、アパートを出ようというところで、ふと思い出して何気なく口にする。
「ねえ、どうして初めては特別な場所にこだわるの?」
スニーカーを靴箱から出す大友にまた新鮮な気持ちでいると、大友は私の何気ない一言にうなだれる。
「それ、聞く?」
「だって……」
玄関の壁にもたれかかり、諦めたように話し出した。
「もし、別れでもしたら」
「今から別れた時を考えてるの?」
「お前が聞きたいって言ったんだぞ。いいなら言わない」
玄関のノブに手をかけて出て行こうとする大友を引き止める。
「あ、待って、教えて」
大友はムスッとした顔をしつつ口を開く。
「今後、誰かと同じ場所に行った時に僅かでも胸の痛みとして残れば……」
「そんなことのために?」
大友のイメージとはかけ離れた理由に目を丸くする。
「だからちゃんと最後まで聞けって」
叱られて小さくなると大友は続けた。