同期は蓋を開けたら溺愛でした

 デパートから出て、駅へと向かう。
 少し離れた場所にあの展望台があるビルが視界に入った。

「ん? ああ」

 あまりにも凝視して速度を緩めた私の視線の先を確認して、大友が何に納得した。

「もう一度、行く?」

 軽いトラウマになっている私は不安げに大友を仰ぎ見る。

「心配しなくてもまだ明るい時間だから健全な人しかいないだろ」

 苦笑する大友に手を引かれ、方向転換をした。

「これからずっと、あのビルを見て悲しそうな顔をされると胸が痛い」

「だって、あそこへ行ってから喧嘩になって……」

「うん。だからいい記憶に上書きしよう」

 つないでいる手を持ち上げ、手の甲にキスをして甘い雰囲気で微笑まれた。

「その行動、照れるから」

「わざと」

 憎たらしい発言をしているのに、甘い雰囲気に何も言えなくなる。

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