同期は蓋を開けたら溺愛でした

 それなのに大友は無理難題を押し付ける。

「なら、俺の気持ちも言わなくても気付けばいいだろ」

「それは難解過ぎでしょ」

「単純だよ。俺なんて」

「どこが」

 居酒屋で言われるまで、全く気づかなかった。
 女とは思われていないとまで思っていて、すっかり安心していたのに。

「恵麻の気持ち待つって言ったのに、増永さんの行動にやきもきして焦ってあんな……」

 前の惨事を思い出すように話し出されて、私も胸の奥が痛くなる。

 いつも気怠げではあるけれど、どちらかといえば穏やかだと思っていた大友の激しい部分を垣間見て、自分は何も大友について知らないんだと痛感した。

 大友は苦しそうに胸の内を吐露する。

「恵麻と考えなしに体の関係になりたくなくて追い返したけど、月曜にはまた打ち合わせで増永さんに会うのにって思ったら飲まずにいられなかった。また目の前で恵麻をかっさらわれるのかって」

「ねえどうして増永さん? 私、増永さんかっこいいとか、一回でも言った?」

 質問を向けると大友に睨まれた。


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