同期は蓋を開けたら溺愛でした

 溶けてしまって何も考えられなくなりそうな刺激の中で、突然異質な音が響いて体を揺らす。

 一瞬、動きを止めた大友だったが、再び唇を重ねようとするから胸をたたいて訴える。

「ブーッブーって大友のスマホじゃない?」

「ああ」

「だ、ダメだよ。こんな時間の電話だし急用かも」

 我に返った恥ずかしさから、電話を無視し続けてまで甘い雰囲気でいられない。

「まあ」

 気乗りしない声を出し、ポケットからスマホを取り出すと「ったく、北川かよ」とぼやいた。

 北川くんは私たちの同期で、大友と仲のいいメンバーの1人だ。
 北川くんを含む、4、5人のメンバーでよく飲みに行く話を聞いていた。

 ちょうど4、5人だし、もしかして展望台を冷やかしに行ったのも、そのメンバーかも。

 そんな呑気な想像をしていると、電話口から声は漏れ聞こえるのに、全く何を言っているのか理解できない声。

 何か、ただならぬ雰囲気が私にまで伝わってきた。

 スマホを耳に当てる大友は、なんとか会話ができているようで受け答えをしている。

「ああ、そうか。うん。分かった。大丈夫だから。ああ」

< 228 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop