同期は蓋を開けたら溺愛でした
16.長かった道のり
エレベーターを待っていると大友が隣に並ぶ。
「おはよ。朝までは朝まででも、ついさっきまで付き合わされたわ」
ぼやく大友はあくびを噛み殺す。
丸一日以上、付き合えばそれは眠くもなるだろう。
会社のオフィスへと続くエレベーター。
同期の顔をして隣に立つ大友にトクンと胸が高鳴って困る。
眠そうな腑抜けた顔なのに、その姿にときめくなんて重症過ぎる。
けれど、そんな素振りを微塵も出さないように、私も努めて同期らしく返す。
「おはよう。打ち合わせで寝ないでよ?」
「願掛け、今からまた始めれば有効かな」
「どうだろう」
「神様も1回くらい見逃してくれるだろ」
「1回じゃないじゃない」
意地悪な顔を向け、エレベーターへ乗り込む流れに合わせて前へ進む。
朝の出社時間には混み合っていて、乗り込むと身動きはほぼ取れない。
そんな庫内で、私の指に人差し指が絡められた。
大友の指の行方を、他の人に見られる状況じゃないのは分かっている。
けれど会社の、しかも他に人がたくさんいる場面での大友の大胆な行動に、微動だにできない。