同期は蓋を開けたら溺愛でした

「せっかくだけど、今日、俺らは飲まないから」

「はい?」

 大友の飲まない宣言に素っ頓狂な声をあげたのは私。

 飲みに来て、飲まないわけ?

「はいはい。昨日も結局、なんだかんだかわしてたけど、やっぱり飲まなかったのか」

「まあ、北川に付き合うのに、飲まないのはきつかったけどな」

 知らなかった事実を語られ、驚いて目を丸くする。

 本当に、願掛けを破ったのは1回だけ。
 前に私が大友のアパートに行った日だけ。

 そんな、今はどうでもいい事実の一致が頭の中を巡る。

 4人だからカウンターには行かず、奥の座敷に通される。

「飲み屋に来て、飲まない宣言はどうかと思うよ。ま、青木さんが大切なのは分かりますが」

 店長まで苦笑した上、意味深な言葉と共に2つのビールと2つの烏龍茶を置いていく。

 注文しなくても通常はビール4つ。
 それが私たちの当たり前だったのに、今は言ってないのにビールと烏龍茶が置かれた。

「な、に? 店長、知ってるわけ?」

 去っていく店長の後ろ姿を見送って、私は声を上げる。

「知ってるも何も、ねえ?」

 里美が楽しそうに笑うと「大友の情けない姿だって……」と口にする阿部くんに「おい、余計な発言するな」と大友が絡んでいる。

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