同期は蓋を開けたら溺愛でした
18.お手柔らかに
あっという間に週末になり、世間では遅めの梅雨明けが発表された。
私の頭の中は大友に言われた通り、カッターの改善案でいっぱいだ。
「今日は俺ん家に来いよ。飯食わせてやるから」
帰り道をぼんやり歩く私の隣で、大友は私に話しかけている。
「ん……」
半分も話を聞いていない私は頬を片手で掴まれて、タコみたいな口にさせられた。
「んん!」
視界の中の大友が「やっとこっち向いた」と苦笑しつつ、穏やかに表情を緩ませた。
「あの、ごめん?」
「最近、謝ってばっかりだな。成長なのか、退化なのか」
「成長でしょ!」
ムキになって大友をたたこうとした腕を取られ、抱き寄せられた。
「俺ん家に来ますか? それともデートしますか?」
「えっと……」
その二択しかないわけ? と、若干躊躇していると「はい、時間切れ」と大友は私の手を引いて歩き出す。
「あの、雄?」
「俺ん家に行く。寝不足そうだし、やつれてる」
「やつれてはないって」
「いいから。今日は食べさせて眠らせるだけだから警戒するな」
私の躊躇した訳を瞬時に見抜かれて、力なく笑う。
「寝落ちしても怒らないから、ちょっとはイチャつこうな」
そう言われ、照れながらも幸せを感じた。