同期は蓋を開けたら溺愛でした
駅に向かう途中、また足を止めた大友を仰ぎ見る。
「どう、したの?」
そこはシティホテルの前。
場所が場所だけに、心臓が騒ぎ出してドキドキと煩わしい。
「晩飯、ここでいい?」
「晩飯って……あの」
私の返事は聞かれないまま。
ホテルの中に入っていくとフロントではなく、レストランなどが入るエレベーターホールへと足を向ける。
私は堪らなくなって大友の腕を引いた。
「ねえ、雄?」
「なに?」
前しか見ていない大友の腕を力強く引っ張って無理やり体を屈めさせると、私は背伸びをして耳元へ囁いた。
「ホテル、予約してくれてあるんだよね? もしそうなら食事はいいから部屋に行きたい」
驚いた顔をやっと私の方へ向けた大友は、自分の鼻をつまんで軽く擦ってから「それなら、行こうか」と小さく答えた。