同期は蓋を開けたら溺愛でした

 行かないという選択肢がないわけじゃないのに、いつものカウンターに座る。

「来なくても俺は待ってる」とか言ったくせに自分のが遅いってどういうことよ。

 不満な思いで、ぐいっと飲み干したジョッキを勢いよくテーブルに置く。

「これ。おまけ」

 きゅうりのはりはり漬けを小皿に盛って渡してくれる店長に「ありがとうございます」と頭を下げた。

「あの」

 つい声をかけて、何を聞きたいっていうの? と、思い直し「なんでもないです」と力なく頭を振った。

「大友さんと喧嘩?」

「そういう、わけじゃ……」

 いつもの威勢はどこへやら、普段は絡んだり管を巻いて店長を困らせているのに、呼んでおいて無言になるという困らせ方をするなんて。

「2人はお似合いだと思うよ」

「……はい?」

 急に話の核心に迫られて息を飲む。

「聞きたいのは、それでしょ?」

 似合っているかどうかを聞きたかったわけじゃない。

「どこをどう見たら……」

 そもそも似合ってなんかいない。
 私たちは同期で、それ以下でもそれ以上でもないはずで。

 再び黙り込む私へ店長は話し始めた。

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