同期は蓋を開けたら溺愛でした

 オフィスに着くと大友の姿を目の端に捉えた。
 先週までと変わりはないのに、どうにも恥ずかしくて、一旦心を落ち着かせるために通路へと舞い戻る。

 オフィスも大友が隣にいる席も、先週と変わらない。
 変わってしまったのは……。

「青木」

「ひゃいっ!」

 変な返事をすると、クククッと笑いを堪えきれていない大友が歩み寄ってくる。

「どんな返事だよ」

 そう言いながらも私を見る目は優しい。

「大丈夫だから、席に行こう」

 手を差し出され、目を丸くする。
 手を繋いで行ったりしたら、なんて言われるか。

「どうした?」

「平気。もう少ししたら行くから」

 絶対だからな。
 そう念押しされて大友は戻っていく。

 甘やかし過ぎだよ。
 嬉しく思いつつも、胸の奥は小さく痛い。

 うじうじしていても仕方ない。
 そう決心してオフィスへと足を向けた。

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