同期は蓋を開けたら溺愛でした

 会社でもアパートでも同期のような恋人のような曖昧な時間を過ごし、そのまま週末になった。
 有耶無耶な関係のまま、社員旅行に行くのは気が晴れないけれど、打開策も思いつかない。

 あれ以来、本当に軽いキスしかしていない。
 気遣われているのが分かって居た堪れないのに、なにも言えなかった。

 気持ちが沈んでいても、お構いなしに社員旅行は開催される。

 社員旅行と言っても、金曜の夕方から出発し、帰りの時間を気にしないで大いに飲んで騒げる、そういう旅行だ。

 取り仕切る原田課長が良きに計らえというタイプの課長のおかげか、堅苦しい雰囲気はなく、おのおの好きに飲んで騒ぐ、本来なら楽しい飲み会。

 宴会場に行くと、旅館について早々、温泉に入った男性社員がちらほら浴衣になっていた。

「半期はよく頑張った。この調子で後半も頑張ろう」

「かんぱーい!」と、楽しそうな声が高らかに上がる。

 盛り上がる周囲に合わせ、なんとなく私もお酒を飲んだ。
 久しぶりのせいか、酔いがまわるのも早い気がして、自制して控えめにする。

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