同期は蓋を開けたら溺愛でした
3.同期の距離感
店の外に出ると、さきほどまで曇っていた空が雨を落としていた。
まるで私の気持ちを表しているみたいだ。
傘を持って来なかったことを悔やみつつ、小走りで帰ろうと決意したところで人混みの中から現れた大友に気づいた。
「どうした」
傘をさす大友が私を傘へ入れるために差し出して、当たり前のように体を寄せる。
店の前でばったり会うなんて。
当たり前か。ここで待ち合わせしたんだから。
それにしても間が悪い。
「帰る、のか?」
大友の問いかけに、小さく頷く。
「なんで」
強い口調ではないのに、責められているみたいで言葉が出てこない。
無言の中、傘に落ちる雨音がなんだか煩わしい。
不意に手をつかまれ、心臓までつかまれたように苦しくなった。
そのまま強引に手を引かれ、歩き出す大友は居酒屋から離れていく。
行き先は大友のアパートのようだ。
私が恋人に振られて帰り道で我慢できずに泣きじゃくってしまった時は、居酒屋に寄らずにアパートへ直行した。
今は、泣いてなんかいない。
何も聞けない雰囲気を醸し出す大友に手を引かれるまま、アパートに到着した。