同期は蓋を開けたら溺愛でした

 帰り道、本当に泣いてしまった私を落ち着ける為に公園のベンチへ座らせ、自販機のジュースを手渡された。

「綺麗……」

 小高い丘の上にある公園は、街が見下ろせてまばゆい夜景を望む。

「ああ。そうだな」

 私の隣に座る大友も夜景を見ながら、手にしている缶コーヒーを口にした。

 蒸すような真夏の熱帯夜も、一日中立ちっぱなしで疲れ切った体も。
 綺麗な夜景に目を奪われて、吹き飛んでしまう。

「俺、転職はできないわ」

「ん?」

「前に不安がってたろ。心配しなくても転職は無理だ。この感覚を知ってしまったら」

「この、感覚?」

 飲んでいる缶を握りしめながら、大友は思いを口にする。

「自分が考えた商品が世に出て、喜んでもらえる感覚」

「……うん。そうだね」

 自分がいいと思って考えた商品を目の前で使ってもらえ、その人の喜ぶ姿が見られる文房具フェス。
 ダイレクトに反応が分かって、やり甲斐を感じやすい。


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