同期は蓋を開けたら溺愛でした

「なあ。結婚しとく?」

「……え?」

 普通の声の調子で言われ、相づちを打ちそうになった。

 結婚って、言った、よね?

「同棲、するんだよな?」

「ええ、まあ」

 そこで大友は立ち上がって、私の方へ向き直る。
 ドキドキと鼓動が速くなって、差し出された手に自分の手を添えた。

「遅くなっちゃったな。帰ろうか」

 重ねた手を引き、歩き出す大友に拍子抜けして、大友の後について行くしかなかった。

 今日の晩ご飯、カレーにする?
 そのくらいのトーンで言われた台詞。

 ちょっと、からかわれただけかな。

 不必要に緊張させられ八つ当たり気味の気持ちを抱えながら、いつも以上に口数の少ない大友とアパートに帰宅した。

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