同期は蓋を開けたら溺愛でした

 木森文房具の社員として公の場所にいた今日の大友は、ずっとジャケットにネクタイを着用していた。
 男らしさの増す大友の隣で、ドギマギした。

 いつも社内なら会議が終わると同時にネクタイを緩めるくらい、カッチリした服装が苦手そうな大友。
 それが今日はどうしてか、アパートまでネクタイを締めたジャケットのまま。

 私は少し戯けて「ネクタイ、解いてあげようか?」と、誘惑する女性を演じるようにネクタイに手をかけた。

「ああ、それは後から頼む。今はいい」

 素っ気なく返されて唖然とした。

 どうにも大友の様子がおかしい。

 私が不安な顔を向けると、大友は私の前でひざまずいた。

「……嘘、でしょ」

 口元を手で覆って、ひざまずいている大友を見つめる。
 大友は深く息を吐いてから、私へ真剣な眼差しを向けた。

「恵麻、愛してる」

 いつになく真剣な物言いに、胸がキュンと苦しいくらいに痛くなる。

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