同期は蓋を開けたら溺愛でした

「恵麻」

 名前を呼ばれ、寝ぼけ眼を薄っすら開ける。

「悪い。放ったらかしにして。濡れたままで寒いだろ。風邪ひくぞ」

 いつもの右隣。温もりを感じ、寝ぼけたまま体をすり寄せる。

「寒い」

「うん。ごめ、うん」

 心地のいい温もりに抗えなくて、重いまぶたをまた閉じた。


 目が覚めて、顔を布団に擦り付けて……。
 ん? 布団?
 いや、これ、大友だ。

 慌てて体を離し、適切な距離を取ると隣から寝ぼけた声をかけられる。

「ああ。起きた?」

「う、うん。ごめん。寝ぼけて、しがみついて寝てたよね」

「ああ。まあ。いいよ。可愛かったから」

 大友からサラッと発せられる『可愛い』の言葉に落ち着かない気持ちになる。

「まだ寝ぼけてるわけ?」

 片手を顔に当て、あくびをする大友は「そっちこそ寝ぼけてなきゃ可愛い台詞も言えないのかよ」と悪態をつく。

「可愛い台詞なんて言うわけない」

「覚えてないだけだろ」

「いい加減なこと言わないで」

「あーあ。一生寝てればいいのにな」

 いつもの調子で言い合って、なんだか嬉しくなる。
 こんなのが嬉しいなんて、どうかしてるんだけど。

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