同期は蓋を開けたら溺愛でした

　不意に、大友が出て行った理由を思い出して、口にする。

「水野さん、大丈夫だったの？」

　普通の質問のはずなのに、大友から楽しそうな雰囲気は消え、代わりに不機嫌そうな低い声で言う。

「それはこっち側の話で、関係ないのに巻き込んで悪かった。終わったから」

　急に突き放された気がして、不平が口をついて出る。

「関係ないって何が。だって私は直接、文句を言われたんだよ」

「だから、もう終わったから」

　頑なに詳しく話してくれない大友に、こっちも忘れていた不満が爆発する。

「やっぱり私はただの同期でしょ？」

「は？　何を急に……」

「だって里美でさえ『里美』って呼ぶくせに、私は『青木』で、水野さんだって可愛らしい下の名前で呼んでたんでしょ」

　だから関係ないって人を蚊帳の外にして、お前を落とすだとかなんだとかは一時の気の迷いに決まってる。

「俺、あの人の下の名前、知らないし」

　突然告げられる無慈悲な事実に絶句する。

　私だって、水野さんの下の名前は知らないけど、私と大友とでは彼女との関わりが違う。

「付き合ってたくせに。最低」

　さっぱりした性格だとは思っていた。
　だからって、そこまでとは思わなかった。

　薄情すぎる態度が信じられなくて、大友から更に距離を取る。