同期は蓋を開けたら溺愛でした

 大友との関係を少しだけ吹っ切れた私は、数日間、デスクで「うーうー」唸っていた。
 見兼ねた原田課長は目頭を押さえながら私へ通達する。

「青木、目の前で唸られると気が滅入る。気分転換に大友と1階のカフェにでも言って来い」

「俺もですか」

 急にお呼びがかかり面食らったような大友。
 私だってどうしていつもセットなのよ、とさすがに不満顔になる。

「青木が周りに迷惑かけないようにお目付役だ」

 言葉の端々がおかしいと感じつつ、原田課長のご厚意に甘え、大友と連れ立ってエレベーターへ向かった。

「やっばり保護者と子ども」

「何が?」

「ううん。なんでもない」

 エレベーターに乗り込むと同時に、鼻歌を歌い始める大友は機嫌がいいらしい。
 たまに外れる音程も、それはそれでいい味を出している。

 エレベーターを降り、カフェへと歩きながら大友に質問を向けられる。

「次の企画、詰まってるのか」

「……うん」

 文房具フェスは大きなイベントだ。
 ここで注目されれば、ヒットも夢ではない。
 だからこそ力が入る。

 大友は普段から煮詰まっている姿は見せない。
 それなのに、何件かヒット商品を手掛けているから尊敬せざるを得なかった。

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