同期は蓋を開けたら溺愛でした

 不意に頬を両手で挟まれ、ドキッとする。
 そのまま引き寄せられ、速まる鼓動で苦しくなると同時に、頭に頭をグリグリと擦り付けられた。

「これでどうだ。よく見えるだろ。普通にしてても男前だってくらい言えないのかよ」

 近過ぎて見えないし。
 そんな文句も胸のドキドキが邪魔をする。

「寝言は寝てから言ってくださいー」

「んだよ。恵麻ちゃんは寝癖でボサボサでも可愛いですけどねー」

「嘘ばっかり!」

 頭に手を当てて、寝癖を隠そうと試みても鼻先で笑われる。

 朝食を用意していた大友はキッチンの方へ向き直り、背を向けた。
 大友の視線から逃れて息をついたのも束の間。

 大友のつぶやくような声が耳に届く。

「かわいいよ」

 顔の見えないひとことは甘く溶けて、どうしようもなく恥ずかしい。

 いつも通りって何?

 居心地のいいはずの大友の隣が、落ち着かなくなっていく予感がしていた。

< 57 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop