同期は蓋を開けたら溺愛でした
「少しだけ、ごめん」
先に謝った大友はそのまま体に腕を回し、ふんわりと抱きしめた。
きつく抱きしめられないもどかしい距離が余計に私の鼓動をおかしくさせる。
「自覚してからもヤバかったけど、まさか、いや、わかってたことだけど」
自問自答するような大友は、はっきりと本音をこぼした。
「同期の顔してお前の隣に立つのがつらい」
大友の言葉にドクンと胸が変な音を立てて軋む。
「キス、してもいい?」
急に甘くなった声色に全身の毛が逆立った気がして、体をこわばらせる。
「ダメ?」
切なくなる声に胸が締め付けられる。
けれど返事はできない。
「……やっぱやめとくわ。無理やり手に入れたって虚しいだけだ」
体に僅かに触れている腕の温もりがなぜだか切ない。
「頼むから、早く俺に落ちてくれよ」
ギュッっと、しがみつきたくなる衝動を抑えても、心の中は嵐が吹き荒れる。
だから、同期をやめちゃうの?
転職して、いつもいた隣の距離から解放されようとしているの?
けれど、それらは聞けるわけもなく、しばらくお互い無言のまま。
私は何も言わずに回された腕に手を置いて、そっと外した。