同期は蓋を開けたら溺愛でした
抵抗されず力なく外れた腕から解放され、私はつぶやくように言う。
「帰る、ね。飲み過ぎちゃダメだよ」
その場から立ち上がる私の手に、大友は指を絡ませた。
絡むというよりも頼りなく引っかかっている状態で、なんとも心許ない。
その触れ方が余計に私の胸を締め付ける。
「……帰るなよ」
「帰るよ。明日、二日酔いだったら許さないから」
私はできる限りいつも通りの調子で返答する。
「恵麻が帰ったら浴びるように飲むに決まってるだろ」
「だからダメだって」
「なら帰るなよ」
埒のあかないやり取りにため息をつく。
「さすがに、ここにはいられないよ」
しばしの沈黙の後、大友は観念したようにつぶやいた。
「……そう。分かった。悪かったな」
かろうじて引っかかっていた指先は離され、それを寂しく思いながらもアパートを後にした。