同期は蓋を開けたら溺愛でした
6.普通ってどうだった?
梅雨らしい雨が昨晩からシトシトと降り続けている。
出社したくないのは、湿気のせいで体が重いからだけではない。
それでも体に鞭打ってアパートを出た。
歩道は傘に埋め尽くされ、いつもより窮屈だ。
その中を無言で歩く。
オフィスに着くと大友の大きな背中が入り口からも確認できて、ホッとする。
二日酔いで休むようなやつじゃないけれど無事に姿を見られて、隣に座る気まずさよりも安堵する思いの方がまさる。
真っ直ぐ自席へ向かい、声をかける。
「おはよ」
「ああ。おはよ」
「二日酔い、してない?」
「ああ。あれからすぐ寝たし」
大友はこちらに顔も向けない。
それはいつも通り。
私よりいつも早く来ているのは原田課長も同じで、今日の予定を念押しされる。
「青木。今日は打ち合わせが立て込んでるから気合い入れていけよ」
「はい」
「大友も青木のついでにプレゼンの時間もらえそうだから、用意しておいてくれ」
「はい」
大友も企画仕上がったんだ。
私は大騒ぎした上に大友までも巻き込んで仕上げた企画。
大友はその合間にしれっと仕上げている。
その余裕が尊敬できる部分でもあるけれど、なんだか鼻持ちならない。