同期は蓋を開けたら溺愛でした

 十時少し前に営業の人たちも会議室へやってくる。
 宿敵とも言える増永さんも入室して、変な緊張感が高まる。

 私は深呼吸をしてから話し始めた。

「8月24日に行われる、文房具フェスに出店する商品の候補を考えました。営業の方に意見をいただきたくお集まりいただきました。お手元の資料をご覧ください」

 私は話す内容に合わせ、資料を見ながらパソコンも操作し、プロジェクターにも必要な画像やグラフなどを表示させる。

「今回、私が考えたものは『さらさらカッター』です」

 プロジェクターには資料にも載せたラフ図を表示させながら説明をする。

「ターゲットは幼児から小学生低学年。安全に使えるカッターを目指しました」

「ほぉ」

 営業課長が感嘆の声を上げ、まずまずの手応えを感じる。

「紙の端から、このタイプですとワニの口に紙をセットします。それから軽く押して出てきた刃で切っていきます。切っている最中もワニの口は紙を一枚入れる隙間しか空いていないため、指などに刃は触れません」

「この構造だと紙の端からしか切れないってことですね?」

 増永さんが意見を口にして、唾を飲み込む。

 そうだ。そういうことになる。
 安全面ばかりに目がいって、カッターとしての機能まで十分に考えていなかった。

 今の仕様では紙の中央から切り始めたいときには使えない。
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