同期は蓋を開けたら溺愛でした
「でもなあ。ターゲットを絞り過ぎじゃないですか?」
増永さんが難色を示して、私も思いついた案を口にする。
「増永さんのおっしゃった、紙の端以外からも切れる仕様を追加するのでしたら、そこに軽く押すと刃が出る仕様や替え刃の仕様も入れればいいんじゃないでしょうか」
「それは紙の端以外からも切れる仕様にできると受け取っていいんですね」
穏やかに微笑まれて言われたのに、痛いところを突かれてギクリとする。
「それは……今から考えます」
他にもデザイン面がどうだとか、360度どの方向にも切り進められるのか、など。
実現するのは困難な要望まで話が出て、議論は白熱する。
それらを資料に走り書きをして、次の改善案に盛り込めるものは盛り込むのだ。
一通りの意見が出揃うと営業課長が口を開いた。
その声は朗らかで私の気持ちを軽くする。
「いいんじゃない。子ども用と大人用。2つを考えて実用化に向けて試作品を作り、それを夏の文房具フェスに出展する方向で」
「はい!」
手応えはまずまず。
増永さんに認められるまではいかなかったけれど、全否定されるような意見の仕方じゃないだけでも救いだ。