同期は蓋を開けたら溺愛でした
「いられなかったも何も、大友は同期で、席も隣だし、嫌でも一緒にいなくちゃいけなくて」
その隣から大友はいなくなりそうで、それを思うと胸が苦しくなる。
その大友の転職についての話を里美に聞いて欲しかった。
今日に限って大友がいつも以上に普通の気がして、やけに心に引っかかって、早く里美に会いたかった。
大友が自然に振る舞えば振る舞うほど不自然で、大友が何もかもを吹っ切って転職するかもしれない想像が現実味を帯びた。
この胸の内を話せるのは里美だけで、聞いて欲しかったのに、そこまでたどり着けない。
私の心をかき回す里美が私を真っ直ぐに見つめ断言する。
「自覚がないみたいだから、はっきり言ってあげる。恵麻は大友くんが好きなのよ」
大友が、好き。
その言葉は胸の鼓動を速めるのには十分で、けれど私は反論した。
「そ、それは、だって。大友は好きだよ。同期として人間としても」
里美はため息をついて、呆れた声を出す。
「男としてよ。よく考えて。私はその間にお料理をいただこうっと」
自分の仕事がひと段落したとでも言いたげな里美は私へ難解な問いを投げかけたまま、料理を楽しみ始めようとしている。
私はぼんやりとスープを口に運びながら大友との出会いの頃へ思いを馳せた。