同期は蓋を開けたら溺愛でした
「ちょっと青木さん、いいかな」
会議室を出て行ったはずの増永さんが再び顔を覗かせて、私へ声を掛けた。
そして私の近くに立つ大友へ告げる。
「大友くん。悪いけど、青木さんと2人で話したいんだ」
増永さんは大友を退室させ、会議室の扉を閉めた。
実は朝、出勤途中に増永さんに話しかけられていた。
「おかしいと思わない?」
「何が、ですか」
「あまりにタイミングが良すぎる」
この話がカッターの話をしているのは言われなくても分かった。
私だって、どうしてこのタイミングで? と思ったくらいだから。
増永さんは声を落として、自身の考えを口にする。
「誰かがリークしてるかもしれない。情報を漏らす見返りに向こうへ寝返ろうとしてる奴が」
寝返るって……。
転職……まさか、まさかそんな。
みるみる顔が青ざめる私を見て、増永さんはそれ以上何も言わなかった。