孤独な私が愛を見つけたら
こんなに近くで母親を感じるのは初めてかもしれない。

「奈緒、佐奈がびっくりしているよ。」

後ろから父親の声がした。

「あっ…、ごめんなさい。あんまりにあなたに会えるのがうれしくて…。」

うれしい…?

母親の腕が解かれて、私はまじまじと母親の顔を見た。

どうも…、本心らしい。

ついそんな風に思ってしまった。

「とにかく中に入りなさい。今日はゆっくり出来るのか?」

年を重ねて、柔和になった父親の笑顔。

2人が私にこんなに感情をぶつけてきたことがあっただろうか。

「…いろいろあって…、今日は有給休暇を取ったの。」

私はぽつりと、そんなどうでもいい事を話す。

「そう。」

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