孤独な私が愛を見つけたら
「私達は佐奈にそうやって“いただきます”をする事も教えてあげられなかったのよね。」

「そうだな、あの頃はそんな時間も気持ちも余裕がなかったな。」

父親もそう言って、ふっと息を吐いた。

「私達は大学を卒業する半年前にあなたの妊娠が分かって慌てて入籍をしたの。お父さんは大学を卒業して、生活の為に必死に働いてくれた。私も内定していた会社に理由を話して辞退、1年後、別の会社に入社し直したの。」

オムライスを見つめながらの母親の表情は段々曇って来た。

「…そう、私達は生活に必死だったの。だから…。」

母親の目に涙が浮かぶ。

すると父親が私に視線を合わせて来た。

「佐奈がこの家を出てから、凄く二人で反省したんだ、これでも。」

そして一瞬目を閉じた父親。

「ごめんね、佐奈。あなたには親らしい事を何もしてやれてない事に気が付きたの。でも遅すぎたわ。あなたに兄弟すら与えてあげられなかった。」

母親の目からついに涙が零れ落ちた。

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