孤独な私が愛を見つけたら

「あなたがあの日家から出て行く背中を見て、初めて思ったの。佐奈はこの家に何も愛着を感じずに、出て行ってしまったと。」

その後を父親が言葉をつなぐ。

「それから私達は話し合った。自分たちなりには協力して一生懸命子育てをしたつもりだった。でも佐奈を見送ったあの日、何かが違うと感じたんだ。その理由は何だろうって。」

父親は一度立ち上がると、母親の傍らに立ち、その背中をさする。

「そして一つの答えにたどり着いたの。私達はあなたをちゃんと抱きしめてあげた事がなかったんじゃないかって。」

母親が父親を見上げた。

「そのせいか、佐奈は私達の様子で私達に何かを求める事を辞めてしまったんじゃないかと。それは…、愛情じゃないのか？」

優しく父親が私に微笑む。

「佐奈は私達に何かをせがんだり、駄々をこねたりすることをしなかった。その事で若い私達は佐奈がとても育てやすい子だと錯覚してしまったんだ。」

私の目から自然に涙がつたった。

「ずっとずっとあなたがここに自分から来てくれる日を待っていたの。私達は待つ事しか出来なかったのよ。そしてついにこの日が来た。」