孤独な私が愛を見つけたら
吉田さんは私の額にキスを落とした。

「話してくれてありがとう…、佐奈…さん。」

その低い声が私の心の中に響く。

そして勢いよく私の身体を離した。

「では…、さようなら。」

右手を上げかけた吉田さんに私は必死に語り掛けた。

「本当にありがとうございました。私のこんなたどたどしい話を最後まで聞いて頂いて…、私…。」

「さっ、もうあなたを送ったりすることは出来ません。だから先に行って下さい。」

私はくるりと振り返ると、真っ直ぐに歩き出した。

「ああ…、参ったな。」

吉田さんはそうつぶやいた後、どこかへ電話をした事を私は知らない。





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